『きみの家にも牛がいる』書評|いただきますの意味を親子で考える知識絵本

紹介した絵本

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牛と人の暮らしのつながりを通して、命や生きることの重みを感じる力を育てる本

著者:作/小森香折 絵/中川洋典

牛乳やお肉は、いつも当たり前のように食卓に並びます。けれど、その向こうには、牛の命と、それを支えるたくさんの人の仕事があります。
『きみの家にも牛がいる』は、そのつながりを子どもにも届く言葉で、静かに、誠実に伝えてくれる知識絵本です。


本のテーマ

牛乳、肉、皮製品などを通して、牛と人の暮らしの深いつながりを知る本です。

育つ力

命をいただくことへの理解、働く人へのまなざし、暮らしの背景を考える力が育ちます。

こんな親子に

食べものの由来を知りたい親子、読み聞かせから知識の本へ進みたい親子におすすめです。


どんな本なのか

『きみの家にも牛がいる』は、牧場で草を食べる牛の姿から始まり、牛乳や肉、皮、骨、脂肪、毛、ふんにいたるまで、牛が人間の暮らしの中でどのように生かされているかをたどっていく本です。

読み聞かせの内容では、牛が四つの胃を持ち、草を消化して栄養たっぷりのミルクをつくることが語られます。そこから、牛乳がいろいろな食べものになること、さらに肉牛が食肉として処理され、皮や脂、骨まで無駄なく使われていくことへと話が進みます。

「肉は初めからあるものじゃない」という一節は、この本の大切な芯です。子どもは、ふだん見えていない食卓の向こう側に、命と仕事の積み重なりがあることに出会います。

大人がこの本を手渡したくなるのは、命の話を感傷的に語りすぎず、“いただきます”の意味を、現実の手ざわりとともに伝えてくれるからです。かわいい動物の本としてだけではなく、少し大きくなった子にこそ読んであげたい一冊です。


この本が気になる方へ

一度読んで終わりではなく、子どもの成長に合わせて受け止め方が変わっていく本です。
幼い頃には驚きとして、少し大きくなってからは社会への理解として読み返せるので、家庭に一冊あると読書の土台になってくれます。

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この本を読んで子どもは何を感じるのか

  • 牛は牧場にいるだけではなく、自分の家の暮らしにもつながっていると気づけます。
  • 牛乳やお肉が当たり前にあるわけではないことに、驚きが生まれます。
  • 食肉処理や加工に関わる人の仕事を知り、見えないところで働く人へ思いを向けられます。
  • 命をいただくことの重さとありがたさを、子どもなりに静かに感じ取れます。
  • 読後には、家の中を見回して「これも牛とつながっているのかな」と、身の回りを新しい目で見るようになります。

この本で育つもの

知識

牛には胃が四つあり、草を消化してミルクをつくること。牛乳からさまざまな食べものができること。肉になるまでに多くの工程と人の手があること。さらに、皮や脂肪、骨、毛、ふんまで利用されること。
こうした知識は、食育にとどまらず、産業・仕事・資源利用への理解へつながります。

情緒

この本の魅力は、「かわいそう」だけでも「おいしい」だけでも終わらない気持ちを育ててくれるところです。命をもらうことと、それを丁寧に支える人の仕事、その両方を受け止める心が育っていきます。

行動

読後に「いただきます」を少し丁寧に言いたくなる、食品表示を見たくなる、図鑑で牛を調べたくなる。そんなふうに、暮らしを見直す小さな行動につながりやすい本です。

ユーモア/楽しさ

「きみの家にも牛がいる」という題名そのものに、子どもの心をつかむおもしろさがあります。
「え、うちに牛なんていないよ」という驚きから読み始められるので、知識の本でありながら、発見の楽しさがあります。

ことばの力・思考力へのつながり

  • 見えているものの奥を考える思考力
  • 「どこから来たの?」と問いを立てる力
  • 感じたことを自分の言葉で話す力
  • 社会の流れを読み取る読解力
  • 動物や働く人へのまなざしを育てる他者理解

読み聞かせを深める親子の会話

  • 「“きみの家にも牛がいる”って、最初はどんな意味だと思った?」
  • 「牛乳やお肉を見る気持ち、読む前と読んだあとで少し変わった?」
  • 「牛に関わる仕事をしている人は、どんなことを大事にしていると思う?」
  • 「もし自分が牧場の人だったら、牛にどんなふうにしてあげたい?」
  • 「もし自分が食肉処理の仕事をする人だったら、どんな気持ちになると思う?」
  • 「おうちの中で、牛とつながっていそうなものを一緒に探してみようか」
  • 「“いただきます”って、どんな相手に言っている言葉なんだろう」
  • 「命をむだにしないって、わたしたちにはどんなことができるかな」

読み方のポイント

この本は、やさしい題名に比べると、内容は思いのほか深く、現実に触れています。ですから、説明を急がず、子どもが立ち止まる余白を残して読むのがよいと思います。とくに食肉処理の場面は、感情を強く乗せすぎず、淡々と読むほうが、かえって子ども自身の感じ方が育ちます。

絵も印象的です。牛のページでは、黒白の乳牛が大きく中央に描かれ、緑の牧草地と淡い青空が広がっています。明るく、清潔感があり、まずは牛という存在をまっすぐ見せる構図です。

一方、工程を追うページでは、複数の場面が順に並び、落ち着いた色合いで説明的に構成されています。派手に見せるのではなく、理解しやすさを大切にした知識絵本らしい紙面になっているので、子どもが観察しながら読むのに向いています。

ページをめくるときは、先回りして全部説明せず、子どもが絵の中から見つける時間を少し待ってあげたいところです。

また、「いただきます。」の前後では、声を少し静かにして間を取ると、その言葉の重みが自然に伝わります。

「こわい」「かわいそう」と感じる子もいれば、「へえ」と知識として受け取る子もいます。どちらも自然な反応です。すぐに答えへ導こうとせず、そう思ったんだね、と受け止める読み方が、この本にはよく合います。


こんな親子におすすめ

  • 食べものがどこから来るのか、少し深く知りたくなってきた親子
  • 動物が好きで、かわいいだけではない本も手渡したいご家庭
  • 絵本から知識の本、社会につながる本へ橋をかけたい親子
  • 「いただきます」の意味を、説教ではなく本を通して伝えたい大人
  • 小学校入学後も、考える読み聞かせを続けたい親子

読むときの配慮
食肉処理の場面は、年齢や感じ方によって受け止め方が異なります。動物への思いが強いお子さんには、一度に読み切らず、区切って読むのもよいと思います。


次の読書へつなげる道標

この本のあとには、子どもの関心に応じて読書を広げやすくなります。

  • 牛そのものに興味が向いたら
    家畜や反すう動物の図鑑、牧場の仕事を紹介する本へ。
  • 牛乳や食べものに関心が向いたら
    牛乳ができるまで、チーズやバターづくりの絵本や児童書へ。
  • 仕事や社会の仕組みに興味が向いたら
    食べものの流通、工場、働く人を扱う本へ。
  • 命をいただくことをもっと考えたくなったら
    食育の本、農業や漁業を描いたノンフィクションへ。

絵本から知識絵本へ、さらに図鑑や仕事の本へとつないでいくと、読み聞かせから読書への流れがとても自然です。


読み聞かせを進化させる体験・贈り物

  • 牧場見学
    牛の大きさやにおい、食べる様子を体で知ることで、本の理解が深まります。
  • バターやチーズづくり体験
    牛乳が食べものへ変わる実感を持ちやすくなります。
  • 家畜や食べものの図鑑
    絵本で生まれた疑問を、自分で調べる読書へつなげられます。
  • おうちの中の“牛さがし”
    革製品やゼラチンを使った食品などを探してみるだけでも、本の世界が現実につながります。

まとめ

『きみの家にも牛がいる』は、牛について知る本であるだけでなく、食卓の向こうにある命と仕事の重なりを親子で見つめる時間をくれる本です。

少しむずかしい現実にも静かに触れながら、「いただきます」の言葉を前より少し大切にしたくなる。そんな読後感を残してくれる一冊です。

幼い頃には驚きとして、成長してからは社会への理解として、長く読み返せる本だと思います。


ご家庭に一冊置いておきたい方へ

すぐに答えを出すための本というより、親子で少しずつ考え続けるための本です。
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