「命の大切さに気づき、他者へのいたわりの心を育てる本」
「『いただきます』の意味を、物語の温度で受け取れる本」
*当サイトでは、アフィリエイト広告(Amazonアソシエイト含む)を掲載し、商品やサービスをご紹介する場合があります。
毎日何気なく口にする「いただきます」。その言葉の向こうに、何があるのかを静かに教えてくれる絵本があります。食肉センターで働く坂本さんと、「みいちゃん」と呼ばれた一頭の牛の物語は、子どもの心に長く残り、大人の胸にも深く刺さります。説教でも、感動の押しつけでもなく、ただ事実として、命のやりとりを描いた一冊です。
どんな本なのか
食肉センターで働く坂本さんは、毎日牛の命を解いてお肉にする仕事をしています。大切な仕事だとわかっていながらも、牛と目が合うたびに「いつかやめよう」と思い続けてきた人です。
ある日、食肉センターに「みいちゃん」と呼ばれている牛が運ばれて来ました。みいちゃんと一緒に育ったという女の子も付き添っています。荷台の上で牛のお腹をさすりながら「みいちゃんごめんね」と繰り返す女の子。その様子を見た坂本さんは、いよいよ「いつかやめよう」という思いを強めるのですが……
「みいちゃん」の命を解くことを迷う坂本さんに、息子のしのぶ君が「お父さんがしてやった方が良かよ。心のなか人がしたら、牛が苦しむけん」と話します。
そして翌朝、みいちゃんに向かって「じっとしとけよ、みいちゃん」と語りかける坂本さん。
この本は、命をいただくという行為を、感情的な叫びではなく、静かな事実として描いています。「いただきます」という言葉の向こうにある現実を、子どもが初めて正面から受け取れる一冊です。
原案は、実際に食肉センターに勤めていた坂本義喜さんの実話をもとにしており、作者の内田美智子さんが文章化しました。絵は魚戸おさむさんが担当しています。
大人がこの本を子どもに手渡したいと思うのは、「命をもらって生きている」という事実を、説教としてではなく、物語の温度として届けてくれるからではないでしょうか。
この本を読んで子どもは何を感じるのか
- みいちゃんへの愛着と悲しさ 女の子がみいちゃんのお腹をさすりながら「ごめんね」と繰り返す場面で、子どもは胸が締め付けられるような感覚を覚えるでしょう。動物と一緒に育つとはどういうことか、その重さが自然と伝わります。
- 坂本さんへの共感と戸惑い 仕事を休もうとした坂本さんが、息子の言葉で出かけていく場面では、「どうして行くの?」という複雑な気持ちが生まれます。答えのない問いと向き合う経験になります。
- しのぶ君の言葉の重さ 「心のなか人がしたら、牛が苦しむけん」というしのぶ君の言葉は、子どもにとって同い年に近い存在が語る言葉として、特別な響きを持ちます。
- 「いただきます」という言葉の意味の変化 読み終えた後、毎日何気なく言っている「いただきます」が、以前とは少し違う言葉に感じられるでしょう。
- みいちゃんの涙 みいちゃんの大きな目から涙がこぼれ落ちる場面は、多くの子どもの心に長く残ります。言葉にならない感情を、子どもなりに抱きしめる時間になるでしょう。
この本で育つもの
🧠 知識
- 食肉センターという仕事の存在と、その役割を知ることができます。
- 私たちが食べるお肉が、どのような過程を経て食卓に届くのかを、物語を通じて理解できます。
- 農家の暮らしと、家畜を育て、売るという現実の一端に触れることができます。
💛 情緒
- 命をいただくことへの感謝と、それに伴う複雑な感情を受け止める力が育まれます。
- 「かわいそう」だけで終わらず、「それでも誰かがしなければならない」という現実への理解が芽生えます。
- 泣きながら「みいちゃん、いただきます」と言って食べた女の子の姿が、子どもの心に深く刻まれるでしょう。
🌱 行動
- 食事のたびに「いただきます」を丁寧に言いたくなる気持ちが自然と生まれます。
- 食べ残しや食べ物を粗末にすることへの感覚が、少し変わるかもしれません。
📖 ことばの力・思考力・読解力・他者理解
- 九州の方言で語られる台詞が、物語に独特のリアリティと温かみを与えています。
- 「なぜ坂本さんは仕事を続けたのか」を考えることで、答えのない問いと向き合う思考力が育まれます。
この本は、図書館でも手に取ることができますが、繰り返し読みたい一冊として手元に置いておく価値があります。読み聞かせのたびに、子どもの受け取り方が少しずつ変わっていくのを感じられるでしょう。
📚 Amazonで見る / 楽天で見る / Yahoo!ショッピングで見る
読み聞かせを深める親子の会話
読み聞かせの後、少し間をおいてから、こんなふうに話しかけてみてください。正解を求めるのではなく、お子さんが感じたことをそのまま受け止めてあげることが大切です。
私自身も、この本を読んでから、スーパーでお肉を手に取るときの感覚がほんの少し変わりました。「誰かが、こうして届けてくれたんだな」と思うようになったのです。
💬 気持ちをたどる問い
- 「みいちゃんのお腹をさすりながら『ごめんね』と言っていた女の子は、どんな気持ちだったと思う?」
- 「坂本さんは、どうして仕事に行くのをやめようと思ったのかな。あなたはどう思った?」
💬 登場人物への共感を促す問い
- 「しのぶ君が『お父さんがしてやった方がいい』と言ったのは、なぜだと思う?」
- 「もしあなたが女の子だったら、みいちゃんにどんな言葉をかけてあげたい?」
💬 暮らしや現実につなげる問い
- 「毎日『いただきます』って言っているけど、それってどういう意味だと思う?この本を読んで、何か変わった?」
- 「お肉が食卓に届くまでに、どんな人たちがかかわっていると思う?」
読み方のポイント
⏱ 読み聞かせに要する時間
概ね10〜15分程度です。文字量はやや多めですが、場面の区切りが自然で、テンポよく読み進められます。
📖 大切に読みたい言葉
- 「みいちゃんごめんね」という女の子の繰り返しの言葉は、急がずゆっくりと。
- 「お父さんがしてやった方が良かよ。心のなか人がしたら、牛が苦しむけん」というしのぶ君の言葉は、静かに、しっかりと届けてください。
- 「じっとしとけよ、みいちゃん」は、坂本さんの覚悟と優しさが両方伝わるよう、低く落ち着いたトーンで読むのがよいでしょう。
🎨 絵・構図・画風について
魚戸おさむさんの絵は、温かみのある線と色使いで、重いテーマを過度に暗くなりすぎず描いています。登場人物の表情や仕草に丁寧さがあり、言葉と絵が静かに呼応しています。みいちゃんの目から涙がこぼれ落ちる場面の描写は特に印象的で、絵の力が言葉を超える瞬間があります。
📄 ページをめくるときの留意点
みいちゃんの涙の場面と、「いただきます」の場面は、めくった後に少し間を置いてください。子どもが絵を見つめる時間を、大切にしてあげてください。
🎵 音読のリズムと間
九州の方言の台詞は、無理に標準語に変換せず、そのまま読んでください。方言のリズムが、この物語の体温そのものです。感情的に読み上げるよりも、淡々と、しかし丁寧に読む方が、かえって深く届きます。
🤍 子どもが立ち止まったとき
「かわいそう」「なんで食べるの」と言葉が出たら、否定も肯定もせず、「そうだね」とまず受け止めてください。答えを急がず、一緒に黙っている時間も、この本の読み方のひとつです。
こんな親子におすすめ
- 「いただきます」の意味を、言葉ではなく物語で伝えたいと思っている親御さん
- 食べ物の命や、食卓の裏側に興味を持ち始めた子ども
- 動物が好きで、命について考えはじめた年齢の子ども(年長〜小学校低学年ごろ)
- 読み聞かせの後に、親子でゆっくり話し合う時間を持ちたい家庭
- 社会科や生活科で「食」や「仕事」を学ぶ時期の子どもにも
⚠️ 配慮点:命を解く場面が具体的に描かれています。感受性の強いお子さんや、動物をペットとして深く愛している場合は、読み聞かせの前後に気持ちを受け止める時間を十分に確保してください。
次に読むなら
🐄 命・食・農業への興味が深まったら
- 食べ物がどこから来るかを描いた知識絵本・食育絵本へ
- 農業・食をテーマにした児童書へ
🐾 動物と人のつながりに興味が向いたら
- 動物の命と人間の関係を深く描いた児童書へ(『シートン動物記』など)
👨👩👦 仕事・社会・人のつながりへ広げたいなら
- 社会を支える仕事を紹介した知識絵本や図鑑へ
読み聞かせを進化させる体験・贈り物
- 精肉店や市場への訪問 スーパーではなく、対面で買える精肉店に立ち寄り、お肉がどこから来たかを聞いてみるのも良い体験になります。
- 食育体験・農業体験 牛や豚を育てている農場の見学や、食育をテーマにした体験施設への訪問。
- 食事の前後の「いただきます」を丁寧にする習慣 特別な道具は必要ありません。読み聞かせの翌朝の食卓から、始められます。
まとめ
『いのちをいただく みいちゃんがお肉になる日』は、「かわいそう」で終わらせない強さを持った一冊です。命をいただくことの重さと、それでも誰かが担わなければならない現実を、静かに、誠実に描いています。読み終えた後、親子の間に流れる沈黙や、ぽつりと出てくる言葉こそが、この本が手渡してくれるものかもしれません。「いただきます」という言葉が、少し違って聞こえる夜になるでしょう。
「いただきます」という言葉の重さを、一緒に受け取ってほしい。そう思える大人から子どもへの贈り物としても、静かにおすすめできる一冊です。


コメント